第27章

山口玥はそう簡単に諦めるつもりはなかった。

電話をかけようとした瞬間、彼女は咳払いの音を聞いた。

山口玥は一瞬にして顔の血の気が引き、スマホをほとんど落としそうになった。

遠くに立っている望月明を見て、山口玥の心臓は激しく鼓動した。

「明、どうして戻ってきたの?今日は友達に会いに行くんじゃなかったの?」

彼女は望月明がいつ現れたのかさえわからなかった。

さっき前田南との会話を、望月明が聞いていたかどうかもわからない。

もし聞かれていたら、彼女は...

今や彼女は望月明の顔を見る勇気もなかった。

「早めに戻ってきたんだ。さっきは電話中だったから、声をかけなかった」

だが、山...

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